引き千切った。
噛み砕いた。
斬り裂いた。
天使であれ、悪魔であれ、堕天使であれ、人間であれ。
今、この世界に存在するものは等しく咎人である。
咎人であるからには殺さなければならぬ。
天使であろうと、悪魔であろうと――。
「……む、待てよ。その場合は咎人なんだろうか?」
首をひねる。どうでもいいことだが、一度気になるとどうしようもない。
ああ、苛々する。
血はすぐに蒸発し、茶褐色のシミになる。
シミはすぐに落ちない。
シミはすぐに消えてくれない。
シミはいつまで経っても百年経っても千年経っても残っている。
苛々する。
本当に――苛々する。
だから、絶叫する頭蓋を掴む。相手が天使であろうが悪魔であろうが人間であろうが、
掌から噴出した炎で、脳 味噌を、骨を、肉体を、皮膚を、即ち命を塵に変える。
燃える、燃える、ただ燃える。
炎は世界最古の現象であり、武器であり、神罰だ。
世界に炎が降り注いでしまえばいい。
否、降り注がせてみせる。それを神はお望みだ。何より、ウリエルという大天使がそれを望んでいる。
ああ、でも仕方ない。
仕方ないんだ。やりたくないけど、仕方ない。
だって世界にはもう、罪人しか存在しない。純粋無垢な神のしもべは、自分ただ一人ではないか。
だから、ウリエルは飛ぶ。
空を駆けて、大地に罰を降り注がせる。
自分ただ一人だけが、正気なのだから――ウリエルは、誰も彼もを殺し尽くす。
ウリエルの思考は正しい。
この世界は歪んで、ねじ曲がり、どうしようもなくなっている。
その点、彼は真っ直ぐだ。ただひたすらに直進する。
……けれど。いくら正しくとも、真っ直ぐであろうとも、間違う場合がある。
心せよウリエル。
奈落へと繋がる罠は、君が進む道にある。