――大海を泳ぐ。
リヴァイアサンに与えられた役割と罰はそれだけである。
何しろ海蛇であるし、東京バベルをぐるぐる巻くことができるほどに巨大であるため、
もうどうしようもないのだ。
「寂しいのぅ……」
ぽつりと呟く。人の目を気にすることなく、泳ぐことを満喫できるというのは有り難いが、
何しろここには何もない。
この巨体では天国にも辿り着けず、水没した地獄の扉を開くこともできない。
「この状態で死ねば、一体どうなるのやら……」
リヴァイアサンは嘆息し、泳ぎ続ける。
その内、面倒臭いので考えるのを停止する。
……が、それはそれで退屈なので夢を視る。
それにも飽きて、現実へと帰還する。
しばらく経って、また思考を停止する――。
そんな時を繰り返し、繰り返し……。
そうして、久しぶりの変化が起きた。
「まさか、こんなところで貴方に出会えるとは思わなかった」
感慨深げにそう呟くかつての友を前に、リヴァイアサンは「相変わらずじゃのう」と応じて。
それから、楽しそうに大笑いした。