――リリスは、悪戯好きである。

 

「リリスーっ! わたしの額に米って書いたのはアンタかーっ!?
ほっぺに肉って書いたのも! もう片方に六芒星を書いたのも!」

 

「あら空見。おはよう。ええそうよ、それが?」
「クラスメイトにっ、クラスメイトに思いっきり笑われたっ!
あまつさえ、刹那に気の毒な目で見られたーっ!」

 

「あっはっは。でもどうせ、顔をごしごしふきふきしてもらったんでしょ?
だったら結果オーライじゃない」

 

「え。あ、いや。それは、まあ……ってそれとこれとは別問題!」
微笑むリリスに、久沓空見は膨れっ面で応じる。
……と、そこへラジエルが飛び込んできた。

普段茫洋とした表情を浮かべている彼女にしては、珍しく焦り気味だ。

 

「リリスーっ! わ、私のっ。私の本、私の本をカマエルに見せた!?」
「あ、うん。見せた。……だってほら、カマエル出てたし」
「た、確かに出てたけどっ! あれは、あれはっ……!」
「えー。あれ何の本だったのカナー? リリス、ぜんっぜん分かんなーい」
「ぐぬぬぬぬっ……!」

「――という訳で、刹那! リリスをぎゃふんと言わせて!」
「うんうん。今回の所業はまっこともって許し難い。私からも頼む」
空見とラジエルの憎悪溢れる視線に、刹那は拒否することもできずに了解した。

 

「粉骨砕身、努力する」

翌朝。

 

刹那はリリスの耳元でこう囁いた。
「今日も綺麗だよ、リリス」

 

リリスはぎゃふんと叫んだが、空見とラジエルは物凄く不満そうに刹那を睨んでいた。
刹那はその理由がさっぱり分からなかったが、とりあえず謝罪した。