希望と欲望、二つの単語が指し示す意味はほとんど変わらない。
なのに、希望は善とされ、欲望は悪とされる。
いずれも、突き詰めればただの望みであろう。
ただ――『かくあれ』と、そう望んだだけだ。
望みに罪はない、願いに咎はない。
それがどれほどのおぞましいモノであっても、想うことに罪はない。
だが……それを果たしてしまった瞬間、罪となり、咎となる。
即ち、贖いを求められる。
「贖いは、果たしていつになるのやら」
罪など数えきれぬ。
咎など背負いきれぬ。
それでも、こうして笑って生きている。
「最初は『希望』……願いは、美しく生誕する」
輝く宝石のように。希望というモノが生み出される。
「次に『欲望』……願いは変質し、醜悪な臭いを発するようになる」
腐食した何かのように。欲望は、下卑た色を持つようになる。
厄介なことに、当の本人はそれにあまり気付かない、気付けない。
希望を叶えることに夢中で、自分がどれほど穢れているか自覚できないのだ。
「最後に『絶望』……願いが叶えられなければ、人は嘆く。
……叶えられたとしても、振り返ってしまえば……やはり、嘆くだろう」
そうじゃない。
そうじゃない。
そうじゃない。
違う、嘘だ、こんなはずじゃなかった、自分はこんなことしたくなかった、
自分はただ、叶えたかっただけなんだ。自分の夢を、願いを叶えたかっただけなんだ。
「だがしかし、俺は悪魔だからな。
嘆かない。悲しまない。そして、絶望もしない。ただ笑うだけだ――ああ、楽しい」
アスタロトは笑い続ける。