――崩壊した東京。
サマエルはぼんやりと空を見ていた。天国への門は閉ざされ、ヤコブの梯子は姿を隠した。

 

「つまりアレだねー。……詰んでるよね、これ」
詰んだ自分が言うのも何だが、この世界は本当にもう終わっているとつくづく実感させられる。
特に、新宿の『アレ』は決定的だ。
望み通り。
大変に、望み通りの結末である。

 

「あー……」
呆けた表情で、彼女は大地を見る。生きる者など一人もなく、死人すらも存在しない。
偽物の世界であるから、虫すらもここには存在しない。

 

「退屈」
そう。終わってしまっている故に、心中を占めているのはただ退屈だという感情だ。

 

「誰かに会いに行こうかなぁ……」

 

誰に会いに行くのか。
誰に会いに行くことを許されるのか。

 

「んー、まあ、とりあえず天道刹那にでも会いに行ってみるか。
面白そうだし、リリスのお気に入りみたいだし!」

 

そうしよー、とサマエルは軽く笑う。
彼女は何にも縛られることがない。
生も死も、殺戮も暴虐も、希望も絶望も、もう彼女にとっては何の意味もないモノだ。
彼女はすぐに天道刹那と出会うだろう。
そして、彼と向き合い――考えなければならなくなる。

 

己が犯した、本当の罪。それが何なのかを。