イヴはアダムに、何をすればいいのか分からない。
彼は元より、完璧である。だから彼と共に在るということは、ただ彼の生活を見続けるだけのことだ。

 

……そのことに不満はない。アダムが完璧であると同様に、イヴは完璧であるからだ。
彼女はただ、アダムに付き従うだけ。
反対意見を出すこともなく、道を違えることもなく、ただ彼の“妻”という役割を果たし続ける。

 

――けれど。これは、妻として成立しているのだろうか?
そんなことを考え、思わず口にしてしまった。
天道刹那は言う。

 

「成立しているだろう。関係は人それぞれだ」
久沓空見は言う。

 

「イヴさんが不満を持っているなら、成立していないのかもなぁ……。
え? 不満じゃない? じゃあ、成立して……るのかな?」

 

そして最後に、リリスが言った。
「成立していると言えなくもないわね。夫婦――『つがい』というのは、足りないところを補う。
いえ、少なくとも補おうとする関係よ。だから、最初から完璧であるアダムには、何をやったって余るだけ」

 

――ならば、成立しているのだろうか。

 

「いいえ。成立していないとも言えるわ。だって、そこには貴女がいない。
貴女は夫婦の関係性を、マイナスにしていない代わりにプラスにしてもいない。
普通の人間たちならば成り立たない状況を、アダムが完璧であるために成立させてしまったのね。だから
――結局、問題はここから先よ。貴女は関係をマイナスにしたいのか、プラスにしたいのか。どちら?」

 

その日、イヴは隣で眠るアダムに手を握って欲しいとせがんだ。
少しだけ、プラスになった気がした。